根の治療(根管治療)をした歯は脆くなるのか?
2021.09.29
こちらも患者様からの質問です。
「根の治療をした歯は脆くなる」というお話は聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
「枯れ木のようになってしまって栄養がいかなくなってしまう」という表現をされることもあるそうです。
実際のところ根の治療を行うことで歯を削るのでそういった意味では強度が落ちるかもしれませんが、そういう意味でいうと詰め物(インレー)の治療でも歯を削りますのであまり変わらないといわれています。
むしろ大きな詰め物の場合の方が歯が脆くなってしまうというデータもあります。
また神経があってもなくても歯の強度自体は変化がないというデータもあります。
今回は2004年のSalehrabi R, Rotstein I.らによる文献を紹介します。
全米で1,462,936本の歯の根の治療の予後を調べたものですが、結果抜歯になってしまった歯の85%は被せ物(クラウン)がされておらず、被せ物ありと比べ前歯で4.8倍、小臼歯で5.8倍、大臼歯で6.2倍抜歯のリスクが高かったと報告されています。
この文献からも根の治療をした後は被せ物をする必要性が高いと言えます。
結論としては根の治療をすることでものすごく歯が弱くなるというわけではなく、被せ物をすることでより高い確率で歯を保つことができるということです。
銀座五丁目歯科
柴田凱人
神経を取ったのに痛いのはなぜ?
2021.09.22
歯科医師の柴田です。
よく患者様から「神経を取ったのになぜ痛むのでしょうか?」というご質問を頂きます。
結論から言いますと歯の周りの神経は通っているので病気がある場合はそこが刺激されて痛みが出ます。
歯の中の神経というのは温度を認識する力がメインになります。
なので神経を取ったからといって全く歯に関する痛みがなくなるわけではありません。
「噛むと痛い」「歯茎を押すと痛い」などの症状があった場合は根の部分に問題があるかもしれませんので是非歯科を受診して頂ければと思います。
銀座五丁目歯科
柴田
根管治療の流れ
2021.09.15
前回までで根管治療の大まかな流れを説明させて頂きました。
お口の中でどのようなことが行われているか少しでも分かっていただけたら幸いです。
実際に治療をすると患者さんご自身で見るのは非常に難しいと思います。なので当院では顕微鏡で写真をステップごとに撮影し、説明させて頂いております。
より明確にどのような状態なのか、どのような処置を行なったのか説明できるよう努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。
銀座五丁目歯科
柴田
根管治療(根の治療)とは④
2021.08.12
こんにちは、歯科医師の柴田です。
今回は根の中が再度感染しないように封鎖する処置についてお話ししていきます。
根の中を綺麗にしてもまた汚れてしまっては意味がありません。
下の図のようにピンク色の材料で詰めていきます。イメージしやすいものでいうとゴムのようなものです。私たちはこれをガッタパーチャと呼んでいます。なかなか聞き馴染みのないワードかと思います。
この封鎖のステップも非常に重要になりますし、テクニック的にも難しいところになります。また、近年進歩した歯科材料の恩恵を受けている部分の一つです。
また封鎖というのは根の中だけでは完結しません。どんなに緊密に根の中を詰めたとしても、精度の高い土台(コア)、精度の高い被せ物がないと台無しになってしまいます。
ここで一つ文献を紹介します。
1995年に発表されたRay HA, Trope M先生の根管治療歯の根尖周囲の状態と根管充填(根の封鎖)及び歯冠修復の質(被せ物の質)の関連性についての文献です。
上手に根の封鎖をしたとしてもその後の被せ物の精度が低いと成功率は44.1%になってしまい、上手な封鎖かつ精度の高い被せ物の組み合わせは成功率91.4%という結果です。
根の治療をした後はそのままにせず、絶対に治療が完了するまで通院するようにお願いします。もしかすると歯を抜かなければならないことになってしまうかもしれません。
根管治療(根の治療)とは③
2021.08.10
こんにちは、歯科医師の柴田です。
引き続き根管治療(根の治療)についてお話ししていきます。
虫歯を取りきった後に実際に根の中にアプローチしていきます。
下の図は歯の断面ですが、汚染された歯髄や過去に根の治療を行った時のお薬を外していきます。こちらの図は簡略化したものですが、実際は木の根っこのように複雑になっていて非常に難しい治療ステップになります。いろいろな器具や薬液をを用いてかつ治療する先生の知識や経験が非常に大切になります。いかに感染物を取っていくのかも成功するかどうかの大きな分かれ道にもなります。
次回は根の中が再度感染しないように封鎖する処置についてお話しします。