銀歯に使われている金属
2019.08.30
こんにちは、歯科医師の椎名です。
前回、軽度〜中等度の虫歯治療には詰め物治療が適応であり、
軽度の虫歯には直接お口の中で歯科用樹脂を詰める「CR充填」という治療方法が、
中等度の虫歯には型取りを行い、後日歯科技工士さんが製作した詰め物をセットする「インレー修復」という治療方法があるというものでした。
今回からそのインレー修復で保険適応されている銀歯についてお話ししていきたいと思います。
銀歯に使われるこの材料、正確には12%金銀パラジウム合金(以下、金パラと略)といい、
JIS企画により金とパラジウムの成分比率で金が12%、パラジウムが20%と定められています。
(メーカーによって残りの成分比率は銀が50%前後、銅が15%前後、インジウムなどの金属が数%と多少異なります。)
腐食への耐性や、金属の柔らかさなど一つ一つの金属だけではフォローできない性質を合金にすることでカバーしています。
さて、この金パラですが1961年に国民皆保険制度が導入された際に戦後の経済状況下で採用された材料です。
当初、銅亜鉛合金を保険診療に導入しようとした国に対し、身体への害を憂慮した当時の歯科学会が反対した結果、できるだけ早期に金合金に移行する条件付きで代用金属としてやむなく認めたものでした。
いうなれば約60年も前に、妥協の末導入された合金です。
産業が発達し、社会の様々な分野で貴金属の需要が増したこと、
また国家間の政治・経済的な問題もあり、貴金属が高騰してきているためかもしれませんが
いまだに健康保険制度の中で代用金属からの移行はなされていません。
パラジウムはロシアや南アフリカが世界産出量の多くを占める貴金属で、工業的には自動車の排ガスを防ぐ触媒として利用されています。
しかし、車に使えば環境に優しい(?)パラジウムですが、歯の詰め物として使えばお口の中の環境で溶け出してイオン化するとアレルギーを引き起こす可能性があります。
人に安心して使える金属ではないというのが多くの国の見解で、ドイツやスウェーデンでは保健省から歯科業界に対して、「幼児および妊婦に、銅を含有するパラジウム合金とアマルガム合金を使用しない」と勧告された結果、現在ではほとんど使用されていません。
歯科の修復材料はお口の中に入れて末長く使っていく材料です。
私達も治療の際にご説明していますが、歯科の保険適応の材料は最低限の機能回復を目的とであり
そこで使う材料が全て患者さんの健康を優先して導入されている材料とはいえないのが現状です。
歯科に限った話ではないのですが、人生100年時代とうたわれている今、
健康への長期的な目線での投資も大切ではないでしょうか。
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